ママの心と体 / 0〜6歳

子どもがかわいいのに疲れる夜に、愛情と休息を分けるノート

子どもがかわいいのに疲れる夜に。愛情と疲労は同時にあるものとして分け、罪悪感を下げる言葉、今日だけ減らすこと、愛情より先に休息と相談が必要なときを整理します。

りくが眠ったあと、部屋は急に静かになりました。

さっきまで床に転がっていたブロックも、テーブルの端に置いた小さなスプーンも、そのままです。

つむぎは、りくの寝顔を見ました。

まるい頬。少し開いた手。寝息に合わせて上下する黄色いパジャマ。

かわいい。

そう思った瞬間に、胸の奥から別の言葉も出てきました。

もう、疲れた。

かわいいと思っているのに、抱っこを求められると体が重い。大切なのに、名前を呼ばれるだけで反応する力が残っていない。寝顔を見ると泣きそうになるほど愛おしいのに、明日また同じ一日が来ると思うと、逃げたいような気持ちになる。

その矛盾に、つむぎは一番傷ついていました。

子どもがかわいいのに疲れるのは、愛情が足りないからではありません。かわいいと思う心と、休みたいほど疲れた体は、同じ人の中に一緒にあります。まず分けたいのは、子どもへの愛情と、育児で消耗している状態です。

かわいいのに疲れる気持ちは、同時にあっていい

親になると、子どもをかわいいと思う気持ちだけで毎日を越えられるように見えることがあります。

でも実際の子育ては、かわいい瞬間だけでできていません。

泣き声に気づく。転ばないように見る。食べた量を気にする。夜中に起きる。危ないものを片づける。園や病院や買い物のことを考える。何度も同じことを止める。抱っこをして、下ろして、また抱っこをする。

小さな反応を、朝から夜まで続けています。

疲れるのは、子どもを大事にしていないからではなく、大事にするための動きが多すぎるからです。

浮かぶ気持ち その奥にあるかもしれない状態
かわいいのに、もう抱っこしたくない 体力が切れていて、触れられ続けることに疲れている
大切なのに、声に反応できない 一日中気を張って、判断する力が減っている
寝顔を見ると泣きそうになる 愛情と罪悪感と疲労が一緒に出ている
明日が来るのがこわい 休息や交代の見通しがない
ひとりになりたい 育児をやめたいのではなく、回復する時間が足りていない

この気持ちを「親失格」と呼ばなくて大丈夫です。

かわいいと思うことと、疲れて休みたいこと。どちらも本当です。片方だけを本物にしようとすると、もう片方の気持ちを押し込めることになります。

子育ての疲れ全体を先に整理したいときは、子育てに疲れた夜に読む、親子を守るためのノート で、まず休息と安全の優先順位を確認できます。ここでは、かわいいのに疲れるという矛盾した気持ちを、責めずに扱っていきます。

罪悪感が強いときは、愛情と疲労を分けて言葉にする

つむぎが苦しかったのは、疲れていることそのものよりも、「疲れたと思ってしまう自分」を責めることでした。

「こんなにかわいいのに、どうして疲れるんだろう」

「もっと楽しめる親でいたい」

「ほかの人は、ちゃんと笑っているのに」

でも、そこで比べるほど、疲れは深くなります。

まず、自分の中の言葉を少しだけ分けます。

私は、りくをかわいいと思っている。

そして、今日はとても疲れている。

この2つは、同時にあっていい。

言葉を分けると、次に必要なものも見えやすくなります。

愛情が足りないのではなく、睡眠が足りないのかもしれない。ひとりの時間が足りないのかもしれない。抱っこや授乳や家事が、つむぎだけに寄りすぎているのかもしれない。

自分を責める言葉 置き換える言葉
かわいいと思えない時間がある 今は疲れていて、感じる余力が少ない
休みたいなんてひどい 休む時間がないと、やさしく戻る力も減る
ちゃんと楽しめていない 楽しむ前に、体を回復させる必要がある
ひとりになりたい私は冷たい ひとりになる時間は、親子の距離を戻す準備になる
子どもに申し訳ない 申し訳なさより先に、今日減らす負担を決める

罪悪感は、愛情があるから出てくることもあります。

ただ、罪悪感だけで育児を続けると、親の休む権利がどんどん小さくなります。子どもを大切にしたいなら、親の回復も同じくらい大切にしていいはずです。

今夜だけ、減らしていいことを決める

かわいいのに疲れる夜は、生活を全部立て直そうとしなくて大丈夫です。

必要なのは、自分を説得してもっと頑張ることではなく、今夜の負担を一つ減らすことです。

1.安全を見て、家事と反応を一つ減らす

乳児は安全な寝床へ、自分で動く子は危険物から離れた場所へ移します。食器を朝へ回す、返事を少し待つなど、今夜の負担を一つ減らします。

2.体の負担を減らし、見守れる場所で休む

抱っこは座る、クッションを使うなど体への負担を小さくします。子どもの声や様子を確認できる入口や廊下側へ数歩離れ、短く呼吸を整えます。

3.10分だけ交代を頼む

「寝る前の10分だけ見ていて」「明日の水筒だけお願い」と、小さく渡します。交代できず手が出そうなほどつらいときは、家庭の外へ相談します。

もし夫婦や家族の分担がずっと偏っているなら、ひとりで抱えすぎていると感じたら、家事育児分担を見直す話し合い方 で、渡せる単位を見つけられます。

疲れている日に、やらなくていいこと

疲れている日ほど、親は自分にたくさんの宿題を出します。

もっと笑わなきゃ。もっと遊ばなきゃ。もっとご飯を整えなきゃ。寝る前にやさしい声をかけなきゃ。今日の反省をして、明日はもっといい親にならなきゃ。

けれど、疲れ切っている日に必要なのは、宿題を増やすことではありません。

やらなくていいことを決めることです。

やらなくていいこと 代わりにしていいこと
一日中、楽しそうな親でいる つらい時間があったと認める
子どもの要求に毎回すぐ応える 安全を確認して、数分だけ間を置く
寝顔を見て反省会をする かわいいと思えた自分も、疲れた自分も両方認める
SNSや周りの親と比べる 今日の自分の体力だけを見る
疲れている理由を完璧に説明する まず「休みたい」と言う

寝顔を見たときに、胸がぎゅっとすることがあります。

今日、強く言ってしまった。遊んであげられなかった。抱っこをせがまれて、ため息をついた。

でも、寝顔の前ですることは、親としての裁判ではありません。明日また戻るために、今夜の自分を少し休ませることです。

子育てに自信がなくなっている日は、自信がなくなった日に読む育児ノート に分けて考えると、比較や自己否定をほどきやすくなります。育児から離れたい気持ちが強い日は、育児から逃げたいと思った日に読むノート も近いです。

愛情と疲れの間で相談を考える目安

かわいいのに疲れる気持ちは、多くの親に起こりえます。

ただし、つらさが続いて安全が保てないと感じるときは、家庭の中だけで抱えない方がいい状態です。

次のようなサインがあるときは、早めに身近な人、自治体、医療機関、相談窓口につながってください。

ひとりで耐えなくていいサイン
  • 子どもを叩きそう、強く揺さぶりそうで怖い
  • 怒鳴る、泣く、無視することが続いて止めにくい
  • 眠れない、食べられない、涙が止まらない状態が続く
  • 子どもがかわいいと思えない時間が長く、生活が回らない
  • 自分や子どもを傷つける考えが浮かぶ

緊急の危険があるときは、110番や119番など地域の緊急窓口につなぎます。「このままだと子どもを傷つけるかもしれない」「虐待かもしれない」と感じるときは、児童相談所虐待対応ダイヤル189があります。子育てや親子関係の悩みを言葉にしたいときは、こども家庭庁の親子のための相談LINEや、自治体の相談窓口も選択肢です。

心の不調が強いときは、かかりつけ医、産婦人科、心療内科、精神科などに相談してかまいません。厚生労働省のこころの健康相談統一ダイヤルでは、電話をかけた所在地の公的な相談機関につながる案内があります。

状態 つながり先の例
体と心の疲れが強い 家族、友人、自治体の子育て相談、保健師
親子関係の悩みを話したい 親子のための相談LINE、自治体の相談窓口
子どもの安全が心配 児童相談所虐待対応ダイヤル189、地域の緊急窓口
自分の不調が続く 医療機関、こころの健康相談統一ダイヤル

不調かもしれない怖さが強いときは、心の不調かもしれないと感じた日に読むノート で、相談目安をもう少し具体的に整理できます。

朝比奈家メモ:寝顔の前で、自分を責めない

つむぎは、りくの寝顔の横に座っていました。

小さな手が、布団の上に出ています。

かわいい。

本当に、かわいい。

それでも今日は、何度も疲れたと思いました。抱っこを求められて、すぐに笑えない時間もありました。床に散らばったブロックを見て、また片づけるのかとため息も出ました。

つむぎは、家族ノートに小さく書きました。

「りくはかわいい」

その下に、少し迷ってからもう一行。

「私は疲れている」

どちらかを消さなくてもよい気がしました。

航平がそっと部屋に入ってきて、散らかったブロックをかごに入れました。

「明日の朝、僕が着替えと水筒を見る。つむぎは、今夜はもう寝よう」

つむぎは、すぐに楽になったわけではありません。

それでも、寝顔の前で自分を責め続ける時間が少し短くなりました。

かわいいと思える心を守るために、疲れた体を休ませる。今夜の朝比奈家には、それが必要でした。

「かわいい」と「疲れた」は、同時にあっていい。

罪悪感より先に、睡眠・交代・ひとり時間の不足を見る。

寝顔の前で反省会を続けるより、明日戻るために休む。

次に読みたい記事

子どもがかわいいのに疲れる夜は、親の愛情が壊れた夜ではありません。

愛情のある親が、ずっと反応し続け、考え続け、抱え続けて、回復を必要としている夜です。

だから、かわいいと思えた自分も、疲れた自分も、どちらも責めなくて大丈夫です。

今夜は、少しだけ荷物を下ろしましょう。明日また子どもの方を向くために、親にも休む時間が必要です。