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子どもの自己肯定感を支えるには、何を言えばいい?
大きく褒め続けるより、見ていた行動や工夫を具体的に言葉にします。失敗した日も関係が切れないことを伝え、親自身が完璧な声かけを求めすぎないことも大切です。
- この記事で扱うこと
- 自己肯定感を点数の高い自信ではなく、自分の存在や試行錯誤を受け止められる感覚として扱います。
- この記事だけで決めないこと
- 発達や学校生活の困りごとは声かけだけで解決しようとせず、園・学校・専門職と一緒に考えます。
- 情報確認日
寝る前、りくは同じ絵本をもう一度読んでほしがりました。
つむぎは時計を見ます。
歯みがきも終わった。明日の準備もまだ少し残っている。早く寝かせたい気持ちが、胸の奥で小さく急ぎます。
「もう寝る時間だよ」
そう言ったあと、りくが少しだけ口をとがらせました。
つむぎは、ふと思います。
私は今日、りくのことをどんな言葉で見ていただろう。
できないところばかり言っていなかったかな。
この子の自信を、知らないうちに削っていないかな。
子どもの自己肯定感は、特別な褒め言葉だけで支えるものではありません。毎日の中で「見ていたよ」「助かったよ」「失敗しても戻れるよ」と伝わる関わりを増やすことが、子どもが自分を受け止める土台になります。
まず、子どもの自信を急いで作ろうとしない
子どもに自信を持ってほしいと思うほど、親はつい言葉を探します。
すごいね。
えらいね。
できるよ。
大丈夫だよ。
どれも、子どもを励ましたい気持ちから出る言葉です。ただ、子どもが失敗しているときや不安そうなときに、すぐ「大丈夫」と言われると、気持ちを置き去りにされたように感じることもあります。
まず大切なのは、子どもを前向きにさせることより、今の子どもの状態を受け止めることです。
| 子どもの姿 | 先に受け止める言葉 | その後に足せる言葉 |
|---|---|---|
| できなくて泣く | くやしかったね | どこまで一緒にやってみる? |
| 失敗して怒る | 思った通りにならなかったね | もう一回にする?休む? |
| やりたがらない | 今はやりたくないんだね | 小さくするなら、どこからできそう? |
| 褒めても黙る | 聞いていたんだね | ママは、ここを見ていたよ |
| 叱られて落ち込む | びっくりしたね | 困ったのは行動で、あなたが嫌いなわけじゃないよ |
国立教育政策研究所の生徒指導リーフでは、子どもの自信を大人が一方的に持たせる発想よりも、認められて育つ視点の大切さが示されています。家庭でも、「すごい」と評価する前に、「見ていたよ」「助かったよ」と関係の中で伝えることができます。
つむぎの本音ノート
りくを元気づけたくて『大丈夫』ってすぐ言っていた。でも、先に『くやしかったね』って言ってもよかったのかもしれない。
毎日の中で使いやすい声かけ
自己肯定感を支える言葉は、大きな成功のときだけ必要なものではありません。
むしろ、生活の小さな場面にあります。
着替えようとした。
こぼしたあとに拭こうとした。
嫌だったけれど戻ってきた。
泣きながらでも、抱っこしてほしいと言えた。
そういう小さな動きを、具体的に言葉にします。
| 言いやすい褒め言葉 | 具体的に見る言葉 |
|---|---|
| すごいね | 最後まで聞いていたね |
| えらいね | 自分で靴を持ってきたね |
| 上手だね | 赤いブロックを箱に入れたね |
| いい子だね | 待つのは嫌だったけど、戻ってきたね |
| がんばったね | 泣いたあとに、もう一回やってみたね |
| 優しいね | ぬいぐるみに毛布をかけていたね |
ポイントは、子どもの性格を決めつけすぎないことです。
「いい子」「すごい子」と言われ続けると、子どもによっては、できない日や怒った日を見せにくくなることがあります。だから、存在をまるごと評価するより、その場で見えた行動を言葉にします。
結果より、途中の動きを見る。
性格を決めつけず、行動を具体的に言う。
できた日だけでなく、戻れた日も言葉にする。
子どもに伝わる言葉そのものを整理したい日は、子どもに伝わる言い方を探す日の声かけノート で、抽象的な注意を具体的な行動に直せます。叱る場面も同じページの「境界線を先に決める」節が使えます。
褒めるより先に、受け止める場面
いつも褒めていれば安心、というわけではありません。
子どもが不安なとき、怒っているとき、うまくできなかったときは、褒め言葉より先に「そう感じたんだね」が必要なことがあります。
失敗したとき
「大丈夫」だけで急いで終わらせず、「こぼれたね。びっくりしたね」と事実と気持ちを分けます。
怒っているとき
「怒らないで」より先に、「嫌だったね」と受け止めます。叩く、投げるなどの行動は止めたまま、気持ちは否定しません。
泣いているとき
「泣かないの」ではなく、「泣くほど嫌だったんだね」と言葉にします。落ち着く前に説明を増やしすぎません。
やりたがらないとき
「できるでしょ」と押す前に、「今は難しいんだね」と見ます。小さな入口にして、始める量を減らします。
叱ったあと
必要な注意は残しながら、「あなたが嫌いなわけじゃないよ」と関係を戻します。行動と存在を分けます。
甘えたいとき
「赤ちゃんみたい」とからかわず、「抱っこしてほしいんだね」と受け止めます。自立を急がせすぎません。
受け止めることは、何でも許すことではありません。
気持ちは受け止める。危ない行動は止める。次にどうするかを小さく伝える。この三つを分けると、親も子どもも少し戻りやすくなります。
航平のひとこと
褒める前に、まず見ていることを伝えるんですね。結果を大きく評価するより、りくが戻ってきたところを一緒に見たいです。
叱る場面でも、存在を否定しない
自己肯定感が気になると、叱ること自体が怖くなる日があります。
でも、危ないことや困ることを伝えないままにする必要はありません。大切なのは、子どもの存在ではなく、今の行動に言葉を向けることです。
| 避けたい言い方 | 子どもに残りやすい受け取り方 | 戻したい言葉 |
|---|---|---|
| 悪い子だね | 自分は悪い子なんだ | その行動は困るよ |
| 何でできないの | 自分はできない子なんだ | 今はどこで止まっているかな |
| もう知らない | 見捨てられるかもしれない | 今は一回止めるね。あとで戻るよ |
| そんな子は嫌い | 自分が嫌われた | 叩くのは止めるよ。あなたが嫌いなわけじゃないよ |
| 泣くなら勝手にして | 気持ちを出すと離れられる | 泣いてもいいよ。落ち着いたら話そう |
こども家庭庁は、体罰等によらない子育ての情報を公開しています。家庭の中でも、力や怖さで従わせるのではなく、子どもが次にどうすればよいかを伝える形に近づけていきます。
強く言いすぎた日は、関係を戻す言葉を足します。
さっきは声が大きかったね。ごめんね。
困ったのは、投げたことだよ。あなたが嫌いなわけじゃないよ。
次は、投げる前に「いや」と言おう。
怒鳴ってしまった後の戻り方を詳しく見たい日は、子どもを怒鳴ってしまう日に、親子を守るための立て直しノート が役に立ちます。親のイライラが続いていて言葉が強くなりやすい日は、子育てでイライラが止まらない日に、親子を守るためのノート に進めます。
つむぎの本音ノート
叱らないことが正解じゃなくて、りく自身を否定しないこと。そこを分けられたら、少し怖くなくなる。
自己肯定感を支える、小さな習慣
子どもの自信は、一回の大きな言葉より、何度も戻ってくる関わりで支えられます。
忙しい日でもできるように、習慣は小さくします。
| 習慣 | かける言葉 | 伝わりやすいこと |
|---|---|---|
| 寝る前に一つだけ振り返る | 今日、りくが自分で靴を持ったの見ていたよ | 親が見ている |
| 手伝ってくれたら言葉にする | タオルを持ってきてくれて助かったよ | 役に立てた |
| 失敗した後に戻る | こぼれたね。一緒に拭こう | 失敗しても戻れる |
| 気持ちを名前にする | 悔しかったね。嫌だったね | 気持ちを出していい |
| 比較を減らす | 昨日のりくより、今日はここまでできたね | 自分の中で進める |
| 選べる場面を作る | 青いパジャマと黄色いパジャマ、どっちにする? | 自分で決められる |
全部を毎日やる必要はありません。
ひとつだけで大丈夫です。寝る前に一文、食事のあとに一文、片づけの途中に一文。子どもが「自分は見てもらえている」と感じられる場面を、小さく増やします。
こども家庭庁は、こども・若者の居場所づくりについて、子どもや若者の声を聴き、視点に立って進めることの大切さを示しています。家庭も、子どもにとって最初の居場所のひとつです。安心して気持ちを出せる関係を、日々の小さな言葉で作っていきます。
アサヒナメモ
子どもの自己肯定感を支える関わりは、親が完璧に褒めることではありません。見て、受け止めて、必要なときは注意し、言いすぎたら戻る。その繰り返しが、子どもにとっての安心になります。
相談した方がよいサイン
自己肯定感のことを考えるとき、親が自分を責めすぎることがあります。
私の声かけが悪かったのかな。
叱ったせいかな。
もっと早く気づけばよかったのかな。
でも、家庭だけで抱えない方がよい状態もあります。子どもの不安や親の怒りが強く続くときは、言葉の工夫だけで解決しようとしないでください。
- 子どもが強く怖がり、親に近づかない状態が続いている
- 失敗を極端に怖がり、眠れない、食べられない、登園や登校を嫌がる状態が続いている
- 親が子どもを責める言葉を止められず、後から強く自分を責めている
- 叩く、強く引っぱる、閉じ込めるなどになりそうで怖い
- 親自身が眠れない、消えたいほどつらい、誰にも頼れないと感じている
緊急の危険があるときは、110番や119番など地域の緊急窓口につなぎます。親子関係や子育ての悩みを言葉にしたいときは、自治体の子育て相談や、こども家庭庁の「親子のための相談LINE」なども選択肢です。
相談することは、子どもの自己肯定感を育てられなかった証明ではありません。親子を守るために、支える人を増やす行動です。
朝比奈家メモ:見ていたことを、一つだけ言う
絵本を閉じたあと、つむぎはりくの布団を直しました。
「もう一回」と言っていたりくは、まだ少し不満そうです。
つむぎは、「早く寝て」と言いかけて、今日のことを思い出します。
夕方、りくは自分で靴を持ってきました。途中で左右を間違えたけれど、玄関まで運びました。
「りく、今日、自分で靴を持ってきたね」
りくが、少しだけ目を上げます。
「ママ、見てたよ」
それだけ言って、つむぎは絵本を棚に戻しました。
特別な褒め言葉ではありません。大きな約束でもありません。
でも、りくの一日が、できなかったことだけで終わらないように。
見ていたことを、一つだけ言葉にする。
明日も、そこから始めればいい。
すぐに励ます前に、子どもの気持ちを受け止める。
「すごい子」ではなく、見えた行動を具体的に言う。
叱ったあとも、存在ではなく行動に言葉を向ける。
子どもの自己肯定感を支える日は、完璧な褒め方を探す日ではありません。子どもが失敗しても、怒っても、泣いても、戻れる関係を少しずつ作る日です。見ていたことを一つ言う。助かったことを一つ伝える。言いすぎたら戻る。その積み重ねで、子どもの中に「自分はここにいていい」という感覚が育っていきます。







アサヒナメモ
自己肯定感を支える声かけは、子どもをいつも褒めることではありません。できたこと、困っていること、戻れたことを具体的に見て、子ども自身を否定しない形で伝えることです。