水筒。連絡帳。着替え。タオル。仕事バッグ。鍵。スマホ。
つむぎは玄関で、りくの保育園バッグを持ち上げました。
最後に残ったのは、電車の時間でした。
りくは黄色い靴を片方だけ履いたまま、ミニカーを握っています。航平は時計を見て、少しだけ眉を寄せました。
「今日は、どっちが送るんだっけ」
その一言で、つむぎの胸がきゅっとなりました。送迎は、誰か一人が歩くだけの仕事ではありません。荷物をそろえる。園へ伝える。遅れそうなら職場へ連絡する。帰りは迎えに間に合うよう仕事を閉じる。お迎え後の夕飯や入浴まで続いていく。
共働き家庭の保育園送迎がつらいときは、「今日はどっちが行くか」だけで考えると詰まりやすくなります。朝と夕方のルート、荷物、連絡、遅れた日の戻し方まで、送迎をいくつかの役割に分けておきます。
送迎がつらくなる理由を分ける
保育園の送迎は、短い距離でも負担が大きくなることがあります。
朝は出勤時間が迫ります。子どもは靴を履かない日もあります。雨の日は荷物が増えます。夕方は仕事を切り上げるタイミングが難しく、迎えに間に合うかどうかで気持ちが張りつめます。
つむぎがしんどかったのは、園まで歩くことだけではありませんでした。
- 前夜に持ち物を確認する役が、いつも自分にある
- 朝にりくが止まったとき、仕事の遅刻まで一人で背負っている感じがする
- お迎え時間を気にしながら仕事をして、ずっと落ち着かない
- どちらが迎えに行くか、毎日その場で決めている
- 帰宅後の夕飯や入浴まで、送迎した人の負担が続いている
送迎が重い日は、親の段取り不足ではなく、朝夕の判断が一人に寄っているサインかもしれません。
共働きの夕方全体が重いときは、共働きで子育てがしんどい日のノート に戻ると、夕飯や洗濯まで含めて整理できます。復帰前後の不安が中心にあるなら、育休復帰が不安な朝の準備ノート が近い入口になります。
つむぎの本音ノート
送っていくだけならできる。でも、荷物も連絡も遅刻のことも全部考えながら歩くと、朝からもう疲れてしまう。
朝の送りを軽くする準備
朝の送りは、当日の朝だけで整えようとすると苦しくなります。まず、朝に考えることを前日の夜へ少し移します。
| 朝に詰まりやすいこと | 前日に寄せること | 当日の担当 |
|---|---|---|
| 園バッグ | 水筒、連絡帳、着替え、タオルを一度見る | 航平がバッグを持ち、つむぎが連絡事項を確認する |
| 靴と上着 | 玄関に二択だけ出す | りくが選び、親は迷う時間を増やさない |
| 仕事バッグ | 鍵、社員証、スマホ充電を玄関近くに置く | 出発前に探し物をしない |
| 出発時間 | 家を出る目安を一つ決める | 過ぎたら説得より移動へ切り替える |
| 雨の日 | レインコート、タオル、替え靴下をまとめる | 荷物を持つ人を先に決める |
朝の担当は、子どもを見る人と荷物を見る人に分けると動きやすくなります。
たとえば、つむぎがりくの靴と声かけを見るなら、航平は園バッグ、仕事バッグ、鍵を持ちます。航平が送る日は、つむぎが前夜の連絡事項をメモにして、当日の口頭説明を減らします。
保育園へ行きたくない朝が続くときは、送迎の分担だけでは解決しにくいこともあります。保育園に行きたくない朝のノート で、子どもの気持ちと玄関の声かけを別に見ます。
園バッグ、着替え、タオル、記名など、持ち物準備そのものが重いときは、保育園の準備を前夜に小さく整えるノート に分けると見通しが立てやすくなります。
アサヒナメモ
朝の送りは、子ども担当と荷物担当に分けるだけでも軽くなります。全部を一人が持つと、遅刻不安まで一緒に抱えやすくなります。
夕方のお迎えを、仕事の終わり方まで含めて決める
お迎えは、園へ行く時間だけの問題ではありません。仕事をどこで閉じるか、何時に出れば間に合うか、遅れそうなとき誰へ連絡するかまで含まれます。
夕方のお迎えは、次の三つに分けます。
仕事を閉じる時間
お迎え時間から逆算して、仕事を終える目安を決めます。会議や締切が入りやすい曜日は、あらかじめ別担当を置きます。
園へ向かう時間
徒歩、自転車、電車、車など、実際の移動時間に余白を足します。雨の日や荷物が多い日は別ルートも考えます。
帰宅後の最初の役割
迎えた人が夕飯まで全部持つと倒れやすくなります。帰宅後は、荷物を開ける人、りくを見る人、夕飯を出す人を分けます。
お迎え担当を決めるときは、曜日で固定する方法と、週ごとに確認する方法があります。
| 決め方 | 合う家庭 | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 曜日固定 | 勤務時間が比較的安定している | 固定担当が残業しやすい曜日を避ける |
| 週ごとに確認 | シフトや会議が変わりやすい | 日曜夜など、確認する時間を決める |
| 朝に最終確認 | 急な予定変更が多い | 毎朝の判断役が一人に寄らないようにする |
| 予備担当を置く | 呼び出しや遅延が心配 | 祖父母、ファミサポ、勤務先調整などを事前確認する |
夕飯が毎回お迎え後に重くなるなら、夕飯が作れない日のノート に分けて考える方が楽です。送迎後の家事を減らすだけでも、夕方の衝突は少し減ります。
航平のひとこと
迎えに行く、で終わりだと思っていました。仕事を閉じる時間と、帰ってから何を持つかまで決めないと、つむぎの夕方は軽くならないですね。
遅れそうな日の連絡順を決める
送迎がつらい理由の一つは、予定が崩れた瞬間に判断が一気に増えることです。
電車が遅れた。会議が伸びた。りくが玄関で泣いた。雨で時間がかかった。園から電話が来た。
そのたびに、誰が迎えに行くか、園へ何と伝えるか、職場へどう言うかを考えていると、送迎そのものより判断で疲れてしまいます。
遅れそうな日の連絡順は、平常時に決めておきます。
| 状況 | 最初に見ること | 連絡する人 |
|---|---|---|
| 朝に出発が遅れた | 何分遅れそうか | 送る担当が職場へ連絡、必要なら園にも共有 |
| 夕方に迎えが遅れそう | 園の閉園・延長時間 | 迎え担当が園へ連絡、もう一人へ状況共有 |
| 電車や道路が止まった | 代わりに行ける人がいるか | 行けない人が代替担当へ連絡 |
| 子どもの体調不良 | 迎え・受診・仕事調整の順番 | 先に動ける人が園へ、もう一人が職場へ |
| どちらも動けない | 祖父母、地域サービス、勤務先相談 | 事前に決めた順で確認 |
厚生労働省は、育児・介護休業法に関する情報や、所定外労働の制限などの制度情報を公開しています。使える制度や職場での扱いは勤務先の就業規則や人事・労務担当でも確認します。
制度の名前を知っているだけでは、当日の送迎は軽くなりません。大切なのは、「何分遅れたら、誰が、どこへ、何を伝えるか」を家族の中で決めておくことです。
つむぎの本音ノート
遅れそうな日に、その場で全部考えるのがつらかった。連絡する順番だけでも決まっていたら、少し落ち着いて動けそう。
週に一度だけ、送迎ミーティングをする
送迎分担は、毎日その場で決めると疲れます。けれど、一か月先まで完璧に決めても、仕事や子どもの体調ですぐ崩れます。
続けやすいのは、週に一度、短く見直すことです。
今週の遅い日
会議、残業、通院、園行事など、お迎えに影響しそうな日を先に出します。
送り担当
朝の送りと荷物担当を分けます。送る人とバッグを見る人が違ってもかまいません。
迎え担当
お迎え時間、仕事を閉じる時間、帰宅後の最初の家事まで決めます。
予備ルート
雨の日、電車遅延、子どもの体調不良、急な会議のときの連絡順を一つだけ確認します。
話し合いは長くしなくて大丈夫です。日曜夜や月曜朝に、カレンダーを見ながら10分だけ確認します。
「火曜は航平が迎え。水曜はつむぎが送る。金曜は雨なら早めに出る」
そのくらいで十分です。完璧な表より、次に迷ったとき戻れる合図を作ります。
夫婦で分担を話すと責め合いになりやすい日は、夫が育児に関わってくれないと感じた夜のノート に戻ると、見えない負担の伝え方を整理できます。
アサヒナメモ
送迎ミーティングは、相手を採点する時間ではありません。今週だけの現実を見て、朝夕に迷う回数を減らすための10分です。
送迎を家庭だけで抱えないための相談先
送迎は、親の工夫で少し軽くできることがあります。けれど、家庭だけでは抱えきれない状態もあります。
- 遅刻や早退が続き、職場で相談できず追い詰められている
- 送迎中に眠気や焦りが強く、事故が怖い
- 子どもが登園前に強く崩れる日が続き、園での様子も気になる
- 片方だけが送迎と家事を持ち、体調や気持ちが崩れている
- 怒鳴る、引っぱるなど、朝夕に危ない対応になりそうで怖い
こども家庭庁は、保育について幼児期までのこどもの育ちや安全・安心な保育に関する情報を公開しています。園での様子が気になるときは、家庭だけで推測せず、先生へ具体的な場面を伝えて相談します。
親子関係や子育ての不安を家庭の外へ話したいときは、親子のための相談LINEなどの相談先があります。
送迎は毎日のことだからこそ、苦しい状態を「これくらい普通」と流しすぎないでください。家族の努力だけでなく、園、職場、地域の力も使って、朝夕を安全に通れる形に近づけます。
航平のひとこと
送迎がうまくいかないことを、家の中だけで責め合わないようにしたいです。園や職場に相談するのも、家族を守る準備ですね。
朝比奈家メモ:今週の送り迎えを10分で決める
日曜の夜、つむぎは家族ノートの端に、小さく曜日を書きました。
月、火、水、木、金。
航平は仕事の予定を見ながら、火曜と木曜に丸をつけました。
「火曜は僕が迎え。木曜は朝の送りを持つ。雨だったら、朝は10分早く出る」
つむぎは、すぐに全部が軽くなったわけではありません。でも、明日の朝に「どっちが送るんだっけ」と迷う時間が、一つ減りました。
りくは、黄色い靴を玄関に並べて、満足そうにミニカーを走らせています。
送迎は、毎日のことです。だからこそ、毎日その場で考え続けなくていい形を、家族で少しずつ作っていきます。
送迎は、移動だけでなく準備・連絡・仕事調整・帰宅後の家事まで含めて分ける。
朝は子ども担当と荷物担当、夕方は仕事を閉じる時間と帰宅後の役割を決める。
遅れそうな日は、誰が・どこへ・何を伝えるかを先に決めておく。
翌朝、二人が別々の荷物を持って玄関を出ると、つむぎは息がしやすくなったと感じました。送迎が家族の仕事になったことがうれしい朝でした。
共働き家庭の保育園送迎は、気合いで乗り切るだけでは続きません。送る人、迎える人、荷物を見る人、連絡する人、帰宅後に家事を持つ人。小さく分けておくほど、朝夕の焦りは少しずつ小さくなります。









アサヒナメモ
送迎は移動だけではなく、準備、連絡、時間調整、お迎え後の暮らしまで続く家事育児です。誰が行くかだけでなく、前後の小さな役割も分けます。