朝の玄関で、りくの足が止まりました。
ランドセルは背負っています。靴下もはいています。黄色いパーカーの袖口を握ったまま、りくは小さく言いました。
「今日、行きたくない」
つむぎは、時計を見ます。登校班の集合時間。仕事の始業時間。欠席連絡。先生への連絡。昨日の友達の話。
「どうして?」と聞きたい。
「行かないと困るよ」と言いたい。
でも、りくの顔を見たら、すぐに背中を押していい朝ではない気がしました。
登校しぶりの朝は、親も追いつめられます。無理に行かせるのか、休ませるのか。どちらかをすぐ決める前に、体調、学校での不安、友達関係、朝の支度の負担、親子の安全を分けて見ます。
登校しぶりの朝に親が迷う理由
子どもが「行きたくない」と言った朝、親の中にはたくさんの心配が同時に出てきます。
- 休ませたら、明日も行けなくなるのではないか
- 無理に行かせたら、もっとつらくなるのではないか
- 本当に体調が悪いのか、不安が体に出ているのか分からない
- 友達や先生とのことで、何かあったのではないか
- 仕事や登校班に間に合わない
- 学校へどう説明すればいいか分からない
迷うのは、親が弱いからではありません。朝は判断する時間が短く、学校での様子が見えず、子どもの言葉もまだ少ないからです。
まず、今日の朝に必要な判断と、あとで学校と相談することを分けます。
| 今すぐ見ること | あとで確認すること |
|---|---|
| 発熱、腹痛、吐き気、睡眠不足など体調 | 学校で最近変わったこと |
| 強い泣き方、固まり方、パニックに近い様子 | 友達、先生、授業、給食、登校班の不安 |
| 親子の声が強くなり、安全に登校準備できない状態 | 何日続いているか、どの曜日や場面で強いか |
| 欠席、遅刻、途中登校の連絡が必要な時間 | 担任、養護教諭、スクールカウンセラーへの相談 |
朝の支度だけで止まっているのか、学校そのものに強い不安があるのか分からないときは、小学生の朝の支度が遅い日のノート と行き来しながら見ます。
つむぎの本音ノート
行かせなきゃと思うほど、りくの声が小さくなっていく。今日の判断と、あとで先生に聞くことを分けないと、私もりくも苦しくなる。
無理に押し出す前に確認したいこと
登校しぶりの朝は、理由を全部聞き出そうとすると、時間も気持ちも足りなくなります。
まず、短い言葉で確認します。迷う普通の朝の第一手は、登校させるかを家庭だけで決め切る前に、「玄関で止まっている」「腹痛を訴えている」など、見えた事実を学校へ一本連絡することです。
1.体と安全
熱、腹痛、頭痛、吐き気、睡眠不足に加え、強く固まる、自分を傷つける言葉がないかを見ます。安全が心配なら登校判断より付き添いと相談を優先します。
2.どこで止まったか
朝の支度なら、起きる・食べる・着替える・玄関のどこか。学校なら、教室・先生・友達・給食・登校班のどれかを一つだけ聞きます。
3.続き方を添えて学校へ連絡する
初めてか、何日続いたか、曜日や授業との重なりを伝えます。欠席、遅刻、途中登校、保健室など可能な形は学校と相談します。
体調不良があるときは、家庭判断だけで無理をさせません。腹痛や頭痛が続く、食事や睡眠が崩れている、強い不安が体に出ているときは、かかりつけ医や学校の養護教諭にも相談します。
航平のひとこと
行くか休むかだけを決めようとすると、りくも僕たちも苦しくなりますね。まず、体なのか学校なのか朝の支度なのかを分けます。
朝にかける言葉を短くする
登校しぶりの朝に、長い説得は入りにくいです。親が説明を重ねるほど、子どもは責められているように感じることがあります。
言葉は短く、選べる形にします。
| 言いたくなる言葉 | 置き換えたい言葉 |
|---|---|
| なんで行きたくないの | 体がつらい?学校がつらい?どっちが近い? |
| みんな行っているよ | 今日は何が一番重いか、一つだけ教えて |
| 休んだら困るよ | 行く、遅れて行く、先生に相談する。どれなら近い? |
| 甘えないで | 今朝はつらいんだね。どうしたら玄関まで行けそう? |
| もう時間がない | 今日は学校へどう連絡するか、先に決めよう |
「行く」と「休む」の二択だけにしないこともあります。
- 登校班ではなく、親が途中まで送る
- 遅れて登校する
- 保健室や相談室から入れるか聞く
- 午前だけ、給食前まで、特定の授業だけなど、学校と相談する
- 欠席して、今日の様子を学校へ共有する
学校によってできる対応は違います。だからこそ、家庭だけで抱えず、学校へ「今朝はここで止まりました」と具体的に伝えます。
「行くか休むか」の前に、体・学校・朝の動線を分ける。
説得より、短い選択肢で子どもが答えやすくする。
遅刻、途中登校、保健室登校など、学校と相談できる形を探す。
子どもへの言葉がきつくなりそうな日は、子どもに伝わる言い方を探す日の声かけノート で、朝の言葉を短く整えます。
学校へ伝えること
登校しぶりが一度だけでも、強い不安や体調変化があるなら、学校へ共有してかまいません。続いているなら、早めに相談します。
学校へ伝えるときは、家庭で見えた事実を短くまとめます。
| 伝えること | 伝え方の例 |
|---|---|
| 止まった場所 | 「玄関で固まり、登校班に向かえませんでした」 |
| 体調 | 「熱はありませんが、朝に腹痛を訴えています」 |
| 子どもの言葉 | 「教室がこわい、休み時間がいや、と言っています」 |
| 続き方 | 「今週に入って三回、同じように止まっています」 |
| 家庭の希望 | 「無理に押し出すより、学校での様子を確認したいです」 |
| 相談したいこと | 「遅れて登校する場合の入り方や、保健室での受け止めを相談したいです」 |
文部科学省の不登校児童生徒への支援に関する通知では、子どもの状況に応じた支援や、家庭と学校、関係機関との連携の重要性が示されています。登校しぶりは、家庭だけの努力で押し切るものではありません。
また、文部科学省には「子供のSOSの相談窓口」や、不登校に関する地元の相談窓口の案内があります。学校へ言い出しにくいとき、子ども本人が相談したいとき、保護者が地域の窓口を探したいときの手がかりになります。
アサヒナメモ
相談は、子どもを学校から遠ざけるためではありません。子どもが安全に学びや人とのつながりに戻れるように、家庭と学校で見えていることを持ち寄るための行動です。
登校しぶりが続き、安全が心配なとき
登校しぶりが続くと、親も子どもも疲れていきます。次のような様子があるときは、家庭だけで判断せず、学校、医療、自治体や地域の相談先につなぎます。
- 朝になると腹痛、頭痛、吐き気が繰り返し出る
- 学校の話になると強く泣く、固まる、パニックに近い状態になる
- 友達や先生との具体的な嫌だった話が続く
- 食欲や睡眠が崩れている
- 持ち物がなくなる、壊れる、汚れることが続く
- 「消えたい」「いなくなりたい」「自分が悪い」に近い言葉が出る
- 親が怒鳴りそうになる、力で連れて行きそうになる
友達関係の話が見えているなら、小学生の友達トラブルに気づいた日のノート で、家庭での聞き方と学校への相談を分けて見ます。
- 自分を傷つけるような言葉や行動がある
- 家庭での声かけが叱責や力ずくになりそう
- 体調不良が続き、日常生活にも影響している
- いじめ、暴力、脅し、性的な不安が疑われる
- 子ども本人が「誰かに相談したい」と言っている
「消えたい」「いなくなりたい」や自傷を示す言動が出たら、子どもを一人にせず、否定や説教を挟まずに話を聞き、その日のうちに学校、医療機関、24時間子供SOSダイヤルなどへつなぎます。今まさに自分を傷つけようとしている、具体的な手段や計画があるなど切迫した危険がある場合は119番、暴力など周囲の危険もある場合は110番を使ってください。
航平のひとこと
僕が仕事の時間ばかり見ていたら、りくの怖さを見落とすところでした。学校へ連絡する役も、つむぎだけに任せません。
朝比奈家メモ:玄関で止まったら、判断を小さくする
つむぎは、玄関に座ったりくの横にしゃがみました。
「体がつらい?学校がつらい?どっちが近い?」
りくは、少し考えてから言いました。
「学校」
「友達?先生?教室?」
「休み時間」
航平はスマホを取り出し、学校へ連絡する準備をしました。
「今日は、遅れて行くか、先生に休み時間のことを聞いてから決めよう」
りくは、ランドセルの肩ひもを少しだけゆるめました。
登校しぶりの朝は、親の予定も、子どもの不安も、玄関に集まります。だからこそ、無理に一歩を押し出す前に、判断を小さくします。
体か、学校か。
一度だけか、続いているか。
家庭で聞くことか、学校と共有することか。
その順番で、親子を追いつめない朝を作っていきます。
登校しぶりの朝は、体・学校・朝の動線・続き方に分ける。
説得より、短い選択肢で子どもが答えやすい入口を作る。
続くとき、体調や安全が心配なときは、学校や相談先へ早めにつなぐ。
『今日はここまで』を一緒に決めたあと、りくの表情が少しやわらぎました。玄関で立ち止まっても戻れる道があることに、つむぎも安心しました。
登校しぶりの朝は、親子のせいではなく、何かが重くなっているサインかもしれません。行かせるか休ませるかだけで自分を責めず、体調と不安を分け、学校とつながる道を一つ作る。そこから、今日の朝を少しだけ安全にできます。








アサヒナメモ
登校しぶりは、甘えかどうかを急いで判定するより、何がつらいのかを分けて見ることが大切です。体調、学校での出来事、朝の負担、続き方を確認して、家庭だけで抱えない形にします。