夕方のリビングで、りくはブロックを抱えたまま泣いていました。
きっかけは、ほんの少しのことでした。つむぎが「ごはんの前に片づけよう」と声をかけた瞬間、りくはブロックを胸にぎゅっと抱き、床に座り込みました。声はどんどん大きくなり、足がマットを打ちます。
つむぎは、少し前までなら「まだ小さいから」と思えた場面で、今日は別の言葉が浮かびました。
「もう話せるのに」
「もう少しわかってくれてもいいのに」
そう思った自分にも、すぐに疲れます。
3歳ごろの癇癪が苦しいのは、子どもの声や体の動きが大きくなるだけではありません。反抗期のように見える強い拒否が続くと、親の中に「わかるはず」という期待が生まれやすいからです。でも、言葉で言えることと、強い気持ちを自分で静められることは同じではありません。
今日の目標は、すぐ泣き止ませることだけではありません。危ない物を遠ざける。言葉を短くする。落ち着いた後に戻る言葉を一つだけ残す。次に同じ場面が来る前の準備を小さく作る。そこから始めて大丈夫です。
「もう3歳なのに」で責めなくていい
3歳ごろは、言葉が増え、できることも増えていきます。だからこそ、親は「説明すればわかるはず」と思いやすくなります。けれど、眠い、空腹、遊びを止めたくない、思い通りにいかない、急な切り替えが苦手。そうした気持ちが重なると、言葉より先に体が動くことがあります。
癇癪が激しいとき、親が最初に見るのは「しつけができているか」だけではありません。
- 危ない物や場所が近くにないか
- 子どもが聞ける状態か
- 眠さ、空腹、疲れ、刺激の多さが重なっていないか
- 親が怒鳴りそうなほど追い詰められていないか
- 落ち着いた後に伝えることを一つに絞れるか
りくは泣きながら、ブロックを床に置いたり拾ったりしました。つむぎは「片づけてって言ったでしょう」と言いかけて、まず足元の硬い積み木を箱に戻しました。説明は後でもいい。今は、ぶつけない場所を作る。
それだけで、親の次の言葉も少し変わります。
つむぎの本音ノート
もう3歳ごろなんだから、と思った瞬間に私の声が強くなる。りくを責める前に、まず今の場所が安全かだけ見たい。
まず安全と刺激を小さくする
強い癇癪の最中は、正しい理由を伝えるより先に、安全と刺激を整えます。床に転がる、物を投げる、頭をぶつけそうになる、道路や階段へ向かう、きょうだいや大人をたたく。そうした場面では、納得を待つより先に危険を小さくします。
1.危険な物と場所から離す
積み木、椅子の角、ドア、階段、熱い飲み物から離します。外では道路・駐車場・段差から離れ、車が来ず通行を妨げない場所へ移ります。
2.言葉と刺激を小さくする
「危ないから離すね」「そばにいるよ」まで短くし、テレビ、スマホの音、大人の声、人の多さを減らします。長い説明は落ち着いてからにします。
3.親は一歩引き、必要なら交代する
怒鳴りそう、強く引っぱりそうなら、子どもへすぐ届く距離で親が一歩下がります。別の大人がいるなら、説明より先に見守りを交代します。
抱っこで落ち着く子もいれば、触られるとかえって激しくなる子もいます。安全確保のために抱える必要があるときは、「危ないから抱っこするね」と短く伝えます。触られるのを嫌がるなら、すぐ届く距離で見守ります。
航平のひとこと
りくが激しく泣いていると、僕も早く止めたくなります。でも、まずブロックや椅子を下げる。つむぎが言葉を増やさなくて済むように、僕が場所を整えます。
落ち着いた後に、言葉に戻す
3歳ごろの強い癇癪では、泣いている最中に全部を教えようとすると、親子とも疲れます。真っ最中は安全と静けさを優先し、少し落ち着いてから短く戻ります。
戻る言葉は、叱責よりも「気持ち」「止める線」「次の言い方」を分けます。
| 伝えたいこと | 声かけの例 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 気持ちを見る | 「まだ遊びたかったね」 | 気持ちを受け止めることと、全部を許すことを混ぜない |
| 危ない行動を止める | 「投げるのは止めるね」 | 長い説教にしない |
| 次の言葉を練習する | 「次は『もう一回』って言おう」 | 落ち着いてから一つだけにする |
| 親も戻る | 「つむぎも声が大きかった。次は一回座るね」 | 親の反省を長く背負わせない |
たとえば、こんな短さで十分です。
まだ遊びたかったね。投げるのは止めるね。
次は「もう一回」と言おう。
つむぎも声が大きくなった。次は一度座るね。
「ごめんなさい」をすぐ言わせることより、次に危ない行動を減らす道を作ることが大切な日があります。落ち着いた後の一言が残れば、次の場面で親も子も戻りやすくなります。
アサヒナメモ
落ち着いた後に戻る言葉は、長くなくて大丈夫です。気持ちを一つ、止める線を一つ、次の言い方を一つ。多くてもそのくらいにします。
次に同じ場面が来る前にできること
3歳ごろは、「その場で落ち着かせる」だけでなく、次に崩れやすい場面を少し準備できる時期でもあります。もちろん毎回うまくはいきません。それでも、予告、二択、終わり方の合図を一つ持っておくと、親の焦りが少し減ります。
| 崩れやすい場面 | 次回の準備 | 声かけの例 |
|---|---|---|
| 遊びを終える | 終わりの合図を一つにする | 「あと一回積んだら箱に入れよう」 |
| ご飯に移る | 手を洗う前の小さな仕事を渡す | 「スプーンを一つ運ぶ?」 |
| 外出前 | 靴や持ち物を二択にする | 「青い靴と白い靴、どっち?」 |
| 眠い夕方 | 予定を一つ減らす | 「今日は片づけを半分にしよう」 |
| 親が限界 | 交代の合図を決める | 「ブロックで崩れたら航平に交代」 |
準備は、子どもをコントロールするためではありません。崩れやすい時間帯に、親がすぐ強い言葉へ行かないようにするための足場です。
つむぎの本音ノート
りくを変える準備じゃなくて、次の私の言葉を短くする準備。そう考えると、少しだけ取りかかれそう。
激しい癇癪を抱え込まない目安
3歳ごろの癇癪は、声も動きも大きくなり、親の体にも強い反応が出ます。子どもが泣き止まない時間が続くと、冷静でいようとするだけでは足りないことがあります。
次のサインが出たら、対応を増やすより、まず中断や交代を考えます。
- 「いい加減にして」が何度も出そうになる
- 子どもの顔を見ず、声だけが大きくなっている
- 手や肩に力が入り、強く引っぱりそうになる
- 周りの目が気になって、無理に黙らせたくなる
- このままだと叩きそうで怖い
- 涙、動悸、息苦しさ、消えたい気持ちが出る
限界サインは、親の失敗の証拠ではありません。安全を守る合図です。子どもを危険から離し、親がすぐ届く距離で一歩下がる、別の大人に交代する、園や予定先に遅れる連絡を入れる。そうした中断は、親子を守る行動です。
強く言いすぎた後の戻り方は、子どもを怒鳴ってしまった後どうする?親子の関係を戻す言葉 で整理できます。叱り方そのものに迷う日は、子どもの叱り方に迷った日に、関係をこわさないためのノート につなげられます。
航平のひとこと
『代わろうか』だけだと、つむぎが頼みにくい日があります。僕がいる時間は、泣いたら硬い物を下げる、飲み物を用意する、園への連絡を持つところまで引き受けます。
3歳の癇癪を相談したい目安
癇癪には個人差があります。それでも、家庭だけで抱えるには重い場面があります。次のような状態が続くときは、自治体の子育て相談、保健師、小児科、園の先生などにつないでください。
- 頭を強く打つ、物を投げる、かむ、たたくなど安全面の心配が大きい
- 道路、駐車場、階段、浴室など危ない場所で止めにくい
- 癇癪が長く続き、家庭や園での生活に大きく影響している
- 体調不良、睡眠不足、発達、感覚の苦痛が関係していそう
- 親が怒鳴る、強く引っぱる、手が出そうで怖い
- 親自身が眠れない、食べられない、消えたい気持ちが浮かぶ
相談は、親を責めるためではありません。安全を守り、家族の支えを増やすための入口です。親子関係や子育ての悩みを話したいときは、こども家庭庁の相談窓口や親子のための相談LINEも選択肢になります。家庭の中だけでは安全を保てないと感じるときは、児童相談所虐待対応ダイヤル189など、すぐにつながれる相談先を使ってください。
2歳の癇癪・イヤイヤとの読み分け
癇癪の悩みは、イヤイヤ期全体の拒否や、食事、着替え、お風呂、親の怒りともつながっています。ただ、全部を同じ日に解こうとすると、親の負担が増えます。
| 今つらいこと | 分けて見る先 |
|---|---|
| 2歳ごろの癇癪で、まず安全確保から見たい | 2歳の癇癪に困った日に、まず親子を守る対応ノート |
| イヤイヤ期全体の声かけや見通しを整理したい | イヤイヤ期の対応で迷う朝に、親子で消耗しない声かけ |
| 遊びや外出など、活動の切り替えで止まりやすい | 切り替えが苦手な日の支度ノート |
| 着替えの場面で毎朝崩れる | イヤイヤ期に着替えない朝、支度を小さく進めるノート |
| お風呂前の切り替えで止まる | イヤイヤ期にお風呂へ入らない夕方、親子で消耗しない支度ノート |
3歳ごろの強い癇癪では、「言葉が増えたのに崩れる」「親がもう少しわかってほしいと焦る」「落ち着いた後にどう戻るか」を中心に見ます。場面ごとの細かい悩みは、必要なところだけ分けて読めば大丈夫です。
朝比奈家メモ:崩れる前の予告を残す
りくはしばらく泣き続けました。つむぎはブロックの箱を少し遠ざけ、テレビの音を消しました。航平は台所から水を持ってきて、ダイニングの椅子を端に寄せました。
つむぎは、言葉を増やしたくなるのをこらえて、短く言いました。
「そばにいるよ」
泣き止むまでの時間は、短くありませんでした。けれど、硬い物は近くにありません。大人の声も、少しだけ小さくなりました。
落ち着いた後、つむぎはりくの隣に座りました。
「まだ遊びたかったね。投げるのは止めるね。次は、もう一回って言おう」
りくは、すぐにはうなずきませんでした。それでも、つむぎは全部をその場でわからせようとはしませんでした。明日は、片づけの前に「あと一回」を先に言ってみる。航平がいる日は、ブロックの箱を下げる役を頼む。
そのくらいの準備で、次の夕方を少しだけ迎えやすくします。
泣き始めたら、まず硬い物を遠ざける。
言葉は「そばにいるよ」まで短くする。
落ち着いた後に、「気持ち」「止める線」「次の言い方」を一つずつ戻す。
アサヒナメモ
3歳ごろの癇癪は、親の期待も一緒に揺らします。だからこそ、すぐ理解させるより、安全、短い言葉、落ち着いた後の戻し方を持っておきます。
3歳ごろの癇癪が激しい日は、親の心にも「もうわかってほしい」が浮かびます。その気持ちを責めなくて大丈夫です。親も子どもも追い詰めすぎないために、まず危ない物を下げる。言葉を短くする。落ち着いた後に一つだけ戻る。次の準備を一つだけ作る。それだけで、今日の夕方を守れることがあります。







アサヒナメモ
3歳ごろの癇癪は、「もう大きいのに」と責めたくなるほど親の期待も揺れます。まず、子どもを悪者にせず、親の焦りも小さく見積もらず、安全から整えます。